サブカルかぶれの備忘録

忘れないためのメモ、気まぐれな日記

二階堂奥歯さんの文章が堪らなく好きという話

f:id:nekuralice:20190509203949j:plain久しぶりに二階堂奥歯さんの日記ブログ「八本脚の蝶」を読んだのですが、毎度のことながら、その文章のうつくしさ、儚さ、氏の圧倒的な知識量に驚かされました。
恐らく彼女は非常に聡明で、また美にも関心が高く、才色兼備な女性であったのでしょう。

そんな彼女ですが、25歳という若さで自殺により生涯に幕を閉じました。

氏は常に内の自分と対話し内面に世界を創っていくような人物だったのでしょう。或いは生涯を通じて「二階堂奥歯」という物語りを創造しているような感じ。
自殺を肯定するつもりはありませんが、その結末も含めて彼女の物語りはとてもうつくしい。
(ただ、25歳で既にこれほどの感性を持っていた方の、その後の人生の歩み方が見られない点は悔やまれますが……)

彼女は相当な読書家であったようです。ブログには膨大な量の本のタイトル、引用が出てきます。ほんとうにすごい。
そしてなにより乙女です。

例えば、最初のほうの日記はこのような感じ。



朝山蜻一「白昼艶夢」を読んで影響され、クローゼットからコルセットを引っ張り出す。

ちなみにこの話はたおやかに括れた女体を求める恋人のために、食も取らずにコルセットをきつくきつく締め上げてついには死んでしまう女の話。

コルセットだけでなくて、私のクローゼットには乙女の装備品が様々入っています。
イヴニングドレスに、床に引きずる白いヴェルヴェットのマント、革でできた上品な仮面、その他もろもろ。
使うあてはなくても買う! それが物欲に生きる者の嗜みなのです。
何時なんどき仮面舞踏会への招待状が来ても対応可。こうでないといけません。

ちなみに玄関にはちゃんと非常袋も用意してあります。

非常袋は市民の心得。コルセットは乙女の心意気。
以上。

(2001年6月14日の日記より)


このように彼女の物語りは綴られていきます。
そして読み進めていくと彼女は読書だけでなく化粧品や香水、人形やアニメにも興味があることがわかります。しかしとにかく文章が綺麗で全く俗っぽさを感じさせない。

後半は精神的に不安定になってきたせいでしょうか、本の引用ばかりの日記が増えていきます。この辺りは見ていて非常につらい。

そんななか自身の言葉として綴った文章として印象に残っているのはこの部分。


ごしゅじんさまだいぼしゅう!》
二階堂奥歯の条件
・お金はいりません。衣食住と、愛情表現と、肯定をください。
・お風呂には一日二回入ります。
・活動的な種ではないので、部屋飼いで充分です。
・室内ではパジャマなどを着せてください。とても寒がりなのではだかは無理です。お洋服が好きなので、お外に出るときはおしゃれをさせていただけるとうれしいです。すきなブランドは VIVIENNE TAMと MORGANです。
・化粧品は AYURAで一揃いそろえていただければ大丈夫です。
・病弱ですが持病はありません。よく高熱を出して寝込みます。精神的に非常に脆弱です。

(以下原文はその後も文章が続いております)


この部分が何とも言えない。
兎にも角にも物語りを愛し、自身もそれに引き込まれていった人物であることがわかります。

彼女の引用する書籍の文章は難しいものが多く、従ってわたしはまだまだ彼女の思考を掴みきれてはいないのでしょう。彼女は憧れの人物のひとりですので、今後少しでも近付くことができればいいなあと思います。



以上、ここまで彼女とその文章の魅力について記してみましたが、わたしの拙い言葉では全く伝えきれませんので、興味を持った方は実際にぜひ一度サイトのほうに目を通してみてください。
(但し引き摺られ過ぎない程度に)


二階堂奥歯"八本脚の蝶"へのリンク
http://oquba.world.coocan.jp/month/oquba200106.html